みなさん,こんにちは。
シンノユウキ(shinno1993)です。
今回は「オーソモレキュラー療法」と呼ばれる医療について,それについて調べ,ある程度中立的な立場でそれを紹介したいと思います.また,オーソモレキュラー療法の特徴である高濃度ビタミンC(いわゆるメガビタミン)のガンへの効果についても紹介します.
では行きましょう!
「オーソモレキュラー療法」とは?
はじめに,「オーソモレキュラー療法」とは何なのか.簡単に説明したいと思います.
オーソモレキュラー療法は,オーソモレキュラー医学や分子整合医学などとも呼ばれる医学のことで,日本においては「一般社団法人 日本オーソモレキュラー医学会(JSOM)」が主に提唱しています.
そこでは,オーソモレキュラー療法を以下のように定義しています:
オーソモレキュラー医学とは、ビタミンやミネラル等の栄養素を正しく取り入れることで、病気の予防や治療を行う医療で、欧米を中心に発展してきました。 正しい食事から栄養を取ることはもちろん、必要に応じてサプリメントや点滴などで高濃度の栄養を補充します。個人の体質や体調によって必要な栄養素の種類や量が違うため、専門的な知識を持った医療従事者の指導のもとで行うことが基本です。また、身体に悪影響のある物質を避け、体内からそのような物質を排出することも病気の治療や予防に必要となります。
引用)https://isom-japan.org/about-us/orthomolecular.html
このような定義のもと,同Webページでオーソモレキュラー療法による治療・予防の例として,以下の4つをあげています:
- 例1: ビタミン・ミネラル等の栄養素の投与
- 例2: 糖質制限食
- 例3: 腸内環境の改善
- 例4: デトックス/キレーション
引用)https://isom-japan.org/about-us/orthomolecular.html
例1の ビタミン・ミネラル等の栄養素の投与は,標準的な医療でも用いられているものです.ただし,その内容には若干の戸惑いを覚えます.
転載)https://isom-japan.org/about-us/orthomolecular.html
色々な疾患とそれに関連する栄養素が並んでいます.これだけを見ると,ガンはビタミンCを投与することで予防・治療できると読めてしまいます.その他の栄養素でも,疾患との関連が囁かれているものがありますが,標準医療では十分な根拠が蓄積しているとは言い難いものもあります.
オーソモレキュラー療法=高濃度のビタミン投与?
もう少しオーソモレキュラーについて知らなければと思いましたので,医学文献を検索できるサイト:Pubmedでオーソモレキュラー療法関連の文献を検索してみました.なお,こちらは系統的な手順に則って文献を集めているわけではなく,あくまでもオーソモレキュラー療法について知るために文献を検索しています.
まずは,「orthomolecular」で検索してみました.検索した日(2019/01/03)は253件の文献がヒットしました.
これから,人間を対象としたもの,臨床試験やレビュー論文,さらにAbstractの読めるものに限って検索式を変更しました.検索式は以下のようになりました:
orthomolecular AND Humans[Mesh] AND ( Clinical Trial[ptyp] OR Review[ptyp] ) AND hasabstract[text]
これで34件の文献が残りました.この文献のリストはこちらからダウンロードできます:
これで集まった文献を読む限り,なんとなく自閉症や統合失調症,発達障害,そしてガン.これらの疾患における高濃度のビタミンの添加がオーソモレキュラーで扱われているある種特有な事項だと言えそうです.
高濃度ビタミンCとガン
高濃度のビタミン,これは巷では「メガビタミン」と呼ばれているようです.先で検索して見つかった論文においても目立つのがガンとビタミンCによるものです.先ほど紹介した文献の中には,ビタミンC(アスコルビン酸)の静脈注射がガンの治療に効果的であるかもしれないとする文献もありました.
2005年にIntegrative Cancer Therapiesに投稿された論文では,ビタミンCの静脈注射がガンの予防と治療に有益である可能性があると結論しています.ただし,本論文では主に試験管や細胞,動物レベルでの話に終始しており,それをもって人間にとって有効かもしれないということを示唆するもので,直接的な根拠とはなりえません.
もう少し中立的な立場で書かれたレビューが必要です.こちらがそれに該当するでしょう:High-Dose Vitamin C (PDQ®).これはPDQと呼ばれる,NCI:National Cancer Instituteが提供するガンに関する総合的な情報源で,それの高濃度ビタミン版です.
これで書かれていることを抜粋・要約すると:
- 高用量のビタミンCの経口摂取(10g/d)については2つのRCTがあり,投与群と対照群で生存率などに有意な差がなかった.
- ガン患者を対象とした高用量ビタミンCに関する2つの研究では,ガン関連の毒性の低下とQOL:生活の質が向上したことを報告した.
- 前期臨床試験及び臨床試験の結果は有望なもので,忍容であったが,研究デザインの観点からいくつか限界がある.
となります.つまり,経口投与では効果が認められず,また静脈注射を用いた研究において効果が見られたものの,まだまだエビデンスの蓄積途中で,治療として勧められる段階のものではないといった見方で良いかと思います.
結局のところオーソモレキュラーは効果があるのか?
私は,オーソモレキュラーが示しているであろう栄養療法について全て調査していません.若干の調査を行ったのは,上記で示したガンとビタミンCについてのみです.
そして,そこでの結論もかなり曖昧なものになりました.治療として勧められる段階のものではない,というものです.もしかしたら何年か後に研究が進み,高濃度ビタミンCの投与がガン治療において当たり前に使用されるようになるかもしれない.その可能性がないわけではない,と思ってはいます.
また,もし私がガンになって,標準治療を全て試し,それでも治らないとなった際に,このオーソモレキュラー療法に頼らないとは断言できません.他の方が同様の行為をしていても(標準治療を受けており,かつ主治医の了解を得ているのであれば)積極的に止めることもしないでしょう.ホメオパシーや気功なんかよりは,よっぽど信じる気になれます.
しかし,おそらく最初にビタミンCによる臨床試験が行われてから40年以上もの月日がたっていて,これだけのエビデンスしか蓄積していない現状,保険適用外であるオーソモレキュラー療法を,高いお金を払い,貴重な時間を捻出してまで受ける必要はないと現時点では考えています.
標準医療の代替では絶対にない
今までかなり歯切れの悪いコメントが続いてきましたが,それでも断言できることがあります.それは,高用量ビタミンCの投与が標準的なガン治療の代替となるものではない,ということです.
あくまでも標準医療が基本です.間違っても標準医療を断念・中断し,代替療法に走ってはいけません.現時点では高濃度ビタミンCの投与は,良く言っても科学的根拠を蓄積している段階です.しかし,標準医療はそのエビデンスをしっかりと蓄積し,日々進化を遂げています.それらは比べる対象ですらありません.
なので,ガン治療に限ったことではありませんが,代替療法に頼る前にまずは標準医療に頼って下さい.そして代替療法をどうしても受けたいという場合でも,しっかりと主治医に相談して判断を仰いて下さい.高濃度ビタミンCを用いた治療はある程度忍容性が高いといっても,持病などによっては重篤な副作用を引き起こします.そこは絶対に間違えないでください.
まとめ
今回は話題のオーソモレキュラー療法について紹介し,それが主に提唱している高濃度ビタミンの投与について調べてみました.ビタミンCとガンについてのみ調べた感じでは,まだまだ治療で用いられるレベルのものではないという感じです.間違っても標準医療の代替にはしないようにしてください.