みなさん,こんにちは。
シンノユウキ(shinno1993)です。
「私の存在している意味とは?」なんて大それた事を言いたいわけではありませんが,私が仕事をする上で大事にしている「適材適所と互換性」という考えを紹介できればと思います.
『main actor』
美波さんという女性のシンガー・ソングライターの方がいらっしゃいます.その方の曲に『main actor』という曲があります.下にそのMVを貼ってみます:
おそらく,かなーり若い方をメインターゲットにされていらっしゃる曲だと思います(中高生くらい?).しかし,そのメインターゲットではない20歳代後半に差し掛かる私が聞いても,しっかりと聞き入ってしまいました.歌詞がすばらしく,歌唱による表現も相まって,心に突き刺さるものがあります.このブログを読んでくださっている稀有な方には,ぜひMVをしっかりと聞いてほしい(ひいては他の曲も聞いてほしい)ところですが,参考に曲の最後の部分を引用してみます:
少しだけ 少しだけ 少しだけ 少しだけ
引用)main actor. 作詞 美波
1畳でも居場所が欲しかった
ひとつだけ ひとつだけ ひとつだけ ひとつだけ
僕がここにいる証明を
僕にしか 僕にしか 僕にしか 僕にしか
出来ないことの証明を
僕だから 僕だから 僕だから こんな僕だけどさ
愛してくれよ 許しておくれよ
すべての歌詞はYoutubeのコメント欄(良い悪いは不明)にあります.
人が生きる場合,どのようなステージであっても主演がいて助演(脇役)がいます.注目される人気者がいれば,反対に誰からも見向きもされず記憶にも残らない人がいます.『main actor』は,そんな後者の人が存在価値を追い求める姿を歌っています.
このブログを読んでいる方の中には「自分は後者の人間だ」と思っている方がいるかもしれません.特に,多くの方が従事する「仕事」というステージにあてはめて考える人が多いかと思います.
自分の何倍も仕事ができるエース級社員.同じ仕事でも,自分の何倍も早く,そして質も高いものを仕上げてくる.そんな人が稀にいます.その人と比べてある種の劣等感を抱く場合もあるでしょう.自分には居場所があるのだろうか.そんな風に悩む方も,あるいはいるかもしれません.
そんな方はちょっと時間を割いて以下を読んでみてください.
適材適所
「適材適所」という言葉があります.「適材適所」は仕事や求められる成果に合わせて人員を適切に配置し,リソースを最大化・最適化することを示しています.「貴方に合う仕事はこれ」ってやつですね.「適所適材」とも言われる場合がありますが,どちらの言葉を使うにしても,「人に仕事をあわせる」のではなく「仕事に人をあわせる」と考えると良さそうです.
11人のメッシ
適材適所については,チームスポーツで例えてみると非常にわかりやすいです.たとえばサッカーの場合.最低でも11人のプレイヤーが一丸となって戦います.GKが1人必要な事以外はポジションに特段の決まりはありませんが,守備を専門にする人や攻撃を専門にする人とある程度分かれるのが普通です.攻撃と守備の移行がシームレスになっているモダンフットボールにおいても,これは同様です.
例として,言わずとしれたスタープレイヤー:リオネル・メッシを取り上げます.彼は,ヨーロッパの年間最優秀選手であるバロンドールに何度も輝いています.ポジションは攻撃を専門とするFW.仮にもし,11人全員がメッシだったとしましょう.考えただけでもワクワクしますが,チームとしては全く強くないでしょうね.メッシにプロレベルの守備ができるとは思えませんし,ましてやGKなどできるはずもない.身長が低い(170cm程度)というハンディキャップも補いきれず,空中戦ではかなり不利になることでしょう.
それよりは,一般的なチームのように守備や攻撃などを得意に合わせてある程度分業させ,それぞれが適切なポジションで適切な役割を果たすチームのほうが最大の成果(勝利)を導けるはずです.メッシは自陣前で必死にボールを追いかける必要はなく,ただ攻撃することに持っているリソースを注げば良いのです.
会社に当てはめると…
会社での話に戻ります.
会社員として働いている人間の場合,何らかの適所が与えられるかと思います.比較的大きめなお金を稼ぎ,会社を維持していくためには多種多様な知識が必要です.それだけの知識をたった1人の人間が習得するのは大変ですし,時間がいくらあっても足りません.さらに,それを実践するだけの頭数も要ることでしょう.1人では到底不可能です.そのため,多くの人間がそれぞれの得意なことを持ち寄って一つの成果に向けて邁進する必要があります.歯車の1つとして働くイメージですね.
会社という組織で働く場合,適切なポジションで適切な役割を果たせるように人員を配置すべきです.営業でバンバン成約を取り付けてくるエース級の社員がいたとしても,商品自体の開発はおそらく不得手でしょうし,さらにいうと経理的な知識はないかもしれません.しかし,開発や経理といった業務が会社にとって必要不可欠であるということは,いまさら強調する必要もないことと思います.そういった人たちが開発や経理をしないことには,エース級の社員も輝けないのです.
適材適所という考え方.もしかしたら生み出す直接の利益を見れば,エース級社員が主演かもしれません.しかし,それ以外の社員がそれぞれに役割を果たすことで組織は成り立っています.一畳以上の居場所,僕にしかできないことを「適材適所」という考え方は明らかにしてくれます.
互換性
上位互換と下位互換
とはいえ,世の中は不条理なものです.ああ無情.「天は人の上に人を造らず」なんて言葉がありますが,現に世の中には上も下もあります.学ぶか学ばないかで差がつくのならまだOKですが,それでは説明できないほどの差があったりします.天は二物も三物も与えたりするのです.
トレーディングカードゲームの世界では「上位互換」という言葉があります(参考).
たとえば,
- 山札からカードを2枚ひく
- 山札からカードを3枚ひく
という2種類のカードがあるとします.カードは2枚よりも3枚引けたほうが(多くの場合)良いので,1よりも2のほうが強いカードということなります.その場合,2は1の「上位互換である」という言い方をします(もともとはIT分野で使われていた言葉のようですが,転じてこのような使われ方もなされます).また1は2の「下位互換である」という言い方もなされる場合があります.山札からカードを引くという同じ役割しか果たさないにもかかわらず,その効果量に差があるのです.
現実でも,同様のことは起こりえます.自分の得意分野でも自分より成績がよく,かつ他分野でも力が及ばない.このようなスーパーな方が稀にいます.もし身近にいた場合,お手本という意味では幸運かもしれません.追いつけ追い越せの精神で頑張れる方もいるでしょう.しかし,殆どの場合はかなりの不幸です.誰しも同様に頑張れるわけではないのです.ただただ劣等感を抱くだけの人も同時に多くいらっしゃるかと思います.
コストの概念
そのような場合,コストの概念を導入してみましょう.そのようなスーパーな方の場合,おそらく会社が支払うコスト=給料はかなりのものです.自分とは比べるべくもないでしょう(もし同じくらいという場合,自分がかなりの幸運であるか,成果の見積もりを誤っています).
先ほどのトレーディングカードゲームで例えると,2枚引くカードを使うためには2のコストを支払うだけで済みますが,3枚引くカードを使うためには3くらいコストが必要なイメージです.人間に当てはめる場合は,カードよりもっと色々な要素がありますが,概ねこのような感じです.
現実の会社ではコストは限られています.無尽蔵に人を雇えるわけではありません.たとえ雇えたとしても,維持が難しいかもしれません(昔の銀河系軍団のようなものですね).なので,組織には低コストで,スーパー社員の仕事の一部を担当するような人も必要なのです.
天才1人では成り立たない
天才的なプログラマーが1人いたとします.その人は,ある革新的な製品のコア部分を1人で作り上げるだけの能力があります.加えて,その製品のコア以外の部分だったり,それを宣伝するためのWebページ,ひいては誰も閲覧しないようなヘルプページを,普通の社員の数十倍の速さとクオリティで作り出す能力もあります.この人が数人いた場合,あっという間にその革新的な製品は出来上がりリリースにこぎつけるかもしれません.
しかし,このような社員が何人もいることは通常ありません.いたとしても1人が関の山でしょう.このような場合,スーパーな社員にヘルプページを作らせるのは大きな損失です.もっと大きな単位(国や世界)で見てももったいないことです.ぜひ製品のコアを作るのに集中してもらいましょう.それだけを集中して任せるようにするべきです.しかし,コアの部分が出来上がっても,それだけでは製品として成り立たない.そこで「下位互換」の方々の出番です.この方々で,製品の周りだったりヘルプページを作るべきなのです.
この場合,「下位互換」の方々は劣等感を感じるかもしれません.しかし,このような方々がいなかったら,革新的な製品は世に出現しなかったでしょう.時間やお金,その他のリソースを勘案したコストという面で実現が不可能だったかもしれないのです.そういう意味では「下位互換」の方でも十分に組織に貢献していると言えるのです.
このことでもって,個人の存在証明を果たすのは難しいかもしれませんが,私はこの意識でもって日々の仕事に取り組んでいます.私は下位互換ですが,私がいないと組織が回らないとも思っています.
もちろん,そのポジションにいるのは私以外の誰でも構わないという場面もあるかもしれません.しかし,コストや,先にもでた適材適所の考え方など多くの諸条件を勘案して考えると,誰しもが仕事における自分の居場所や存在を証明することができるのではないかと思っています.
まとめ
今回は仕事における自信の存在証明について,「適材適所と互換性」という大きく2つの視点から整理してみました.ところで,冒頭で紹介した美波さんの曲には他にも良いものがありますので,ぜひ聞いてみてください.