みなさん,こんにちは。
シンノユウキ(shinno1993)です。
痩せたい,肥満を予防したい。こういった方の中には,「速食いをやめてゆっくり食べましょう」というアドバイスを受けた方もいるかもしれません。
しかし,たとえゆっくり食べたところで,今食べている食品のカロリーが少なく見積もられるわけではありません。たくさん噛むことによって,エネルギー消費量が大幅に増加するわけでもありません。となると,「本当に意味があるの?」と疑いたくなるところです。
そこで今回は,「速食いで太る」について,本当に太るのか? 太るのであればその理由は何なのか?について解説したいと思います。
「速食いで太る」は嘘?本当?
結論からお伝えすると,速食いの人は太っている傾向にあり,また速食いによって太りやすくなる理由(メカニズム)についても一部明らかになりつつあります。
食べる速さと肥満との関係について調査した疫学研究の結果をまとめたメタアナリシスでは,下記を報告しています【1】OHKUMA, T., et al. Association between eating rate and obesity: a systematic review and meta-analysis. International journal of obesity, 2015, 39.11: 1589-1596.:
- 速食いの人はゆっくり食べている人と比べて,BMIが平均して1.78kg/m2 高かった
- 速食いの人はゆっくり食べている人と比べて,肥満のリスクが2.15(95%CI:1.53-2.04)倍高かった
ただし,こちらのメタアナリシスに含まれる研究は横断研究であり縦断研究ではありません。つまり,この研究のみからでは因果関係について明らかでなく,速食い→太るとは言い切れない部分があります。ちょっとややこしいですね。
しかし,下記で述べるように速食い→太るについてのメカニズムには,もっともらしいメカニズムがあります。
なぜ速食いで太るのか?
なぜ速食いで太るのか。これは結果としてエネルギー摂取量が増加したためと考えられています。
たとえば,エネルギー摂取量に対する食べる速さの影響についてのメタアナリシスでは,速く食べる人は,遅く食べる人と比べてエネルギー摂取量が多かったことを報告しています【2】ROBINSON, Eric, et al. A systematic review and meta-analysis examining the effect of eating rate on energy intake and hunger. The American journal of clinical nutrition, 2014, 100.1: 123-151.。速く食べる人は,結果として多くのエネルギーを摂取するために太っていた。これもわかりやすいメカニズムです。では,どうして速く食べるとエネルギー摂取量が多くなるのでしょうか。
これにも,もっともらしいメカニズムがいくつか報告されています。食事による満腹感は,胃の膨張や十二指腸等から分泌されるコレシストキニン等によって得られます【3】MORTON, G. J., et al. Central nervous system control of food intake and body weight. Nature, 2006, 443.7109: 289-295.。速食いの人では,この満腹感を得るまでの間に必要以上にたくさんの食べ物を食べてしまっているのかもしれません。
また,エネルギー以外にも要因がある可能性があります。それは食物繊維です。18歳の日本人女性を対象にした研究では,自己申告の食べる速度が速い人ほど食物繊維の摂取量が少ない傾向にありました【4】SASAKI, S., et al. Self-reported rate of eating correlates with body mass index in 18-y-old Japanese women. International journal of obesity, 2003, 27.11: 1405-1410.。また本研究では,食物繊維の摂取量がBMIと負の相関を示していたこと,その関係は食べる速さで調整した場合に有意ではありながらもやや弱まったことを報告しています。これらのことから食物繊維には,①直接的なルート:食物繊維の多い食事→BMIを下げる可能性,②間接的なルート:食物繊維の多い食事→食べる速さが遅くなる→BMIを下げる可能性という2つの可能性が示唆されます。
まとめ・考察・結論
今回は,「速食いで太る」について,本当に太るのか? 太るのであればその理由は何なのか?について解説しました。
上記で見たとおり,速食いの人は太っている傾向にあり,その理由は結果としてエネルギー摂取量が多くること,(間接的に)食物繊維の少ない食事になっていることが可能性として示唆されます。
咀嚼の回数を増やすことで,より満腹感が得られやすくなることが示唆されています【5】ZHU, Yong; HSU, Walter H.; HOLLIS, James H. Increasing the number of masticatory cycles is associated with reduced appetite and altered postprandial plasma concentrations of gut hormones, insulin and glucose. British Journal of Nutrition, 2013, 110.2: 384-390.。意図的に食事の速度を落とし咀嚼の回数を増やすことは,肥満への有効な対策と言えるでしょう。
またその際は,食物繊維が豊富に含まれるような,咀嚼回数が増える・ゆっくり食べられる食事にすることも重要と言えそうです。
参考文献