みなさん,こんにちは。
シンノユウキ(shinno1993)です。
先日,日清食品さんから発売された「All-in NOODLES」の試食会に行ってきました。以下ではその試食会での味の感想等を書いています:
今回はその続編として,栄養価的な部分について,少し考えたいと思います。
ではいきましょう!
「All-in NOODLES」が開発された目的
完全栄養食として販売されているAll-in NOODLES。1食で1日に必要な栄養素の1/3を補えるとしています(実際にはかなり多めのもあります)。「この1食ですべての栄養、全部取り」とのキャッチャーな記述も目立ちます。
なぜこのような商品を作成したのか,については先日訪問した試食会でのお話が参考になります。その際,開発の目的として「日本人の新型栄養失調を解消するために開発した」旨の発言がありました。新型栄養失調の根拠として国民健康・栄養調査の結果をあげ,日本人の食生活は悪化の一途をたどっており,脂質は多く摂取しているものの,たんぱく質やビタミン,ミネラルは不足している。これを解消しようとするのが,「All-in NOODLES」だそうです。そのため,糖質はやや抑え気味にし,たんぱく質やビタミン・ミネラルを多く配合した結果となっています。
新型栄養失調の定義などはさておき,確かにそのようなコンセプトで開発されるのは,現代人の食生活を是正するためには理に適っているように感じます。ビタミンやミネラルが少なく,糖質や脂質に偏ったエネルギー過多な食事を緩衝し,1日を通して健康的な食生活に是正することを助けます。このようなコンセプトはまったく問題ないものかと思います。
しかし,私が気になるのはこの食品を「完全栄養食」と呼ぶことです。
ここに,大きな違和感を感じます。
「All-in NOODLES」にはどのくらいの栄養素が含まれるのか?
それについて考えるため,まずは「All-in NOODLES」に含まれる栄養価について確認しておきます。
日清食品のHPでは「厚生労働省「日本人の食事摂取基準 (2015年版) 」より、30〜49歳男性の推奨量/目安量/目標量をもとに、1日に必要なビタミン・ミネラルの1/3量を配合しました。」と書かれています。つまり,これ1つ食べるだけで,1食分の栄養素を補給することができ,もっといえば,3食これを食べると,1日に必要な栄養素を補えることになろうかと思います。
もう少し具体的にみると,味付けなしの「めん + ほぐしオイル」の商品では,栄養素は以下のようになっています:
なるほど,確かに多くの栄養素が,食事摂取基準に則って掲載されています。ただし,炭水化物や脂質(特に飽和脂肪酸)など,食事摂取基準で基準値(目標量)が掲載されている栄養素でも,基準として示されていないものがあります。
まぁそういった点はとりあえずおいてといて,次はカップタイプの栄養価について見てみましょう。以下は「コク旨油そば」の栄養価です。麺に,糖質と脂質がプラスされた感じになりますね。ただ,脂質が多く添加されたのか,脂肪エネルギー比率が50%を超えているのは,かなり気になるところです:
「All-in NOODLES」の栄養上の問題点
「All-in NOODLES」は,完全栄養食をうたいつつも,栄養的には多くの問題点を抱えていると考えています。
まず,炭水化物(糖質)の含有量が少なく,そのためにエネルギーも少なくなっています。それをある程度満たそうとすると,先ほどカップタイプの栄養価を紹介しましたが,脂質や炭水化物を加える結果になるのかと思います。日本人の食事摂取基準(2015年版)では,炭水化物の目標量は「50~65%」となっています。これは,たんぱく質や脂質の目標量から算出されたものなので,炭水化物から摂取するエネルギーが少なくなると,その他の栄養素を多く摂ることになり,目標を逸脱することになります。それは食事摂取基準の基準等から見た場合に健全とは言えません。特に脂質については,飽和脂肪酸の過剰摂取を防ぐためにも,その脂質の構成を含め気にしたいところです。
また,栄養素の添加のしすぎも気になります。もし3食これを食べるとすると,耐用上限量(摂りすぎによる健康障害が発生する可能性のある量)にかなり近くなる栄養素もあります。そのため,これに加えて何らかの食品を摂取した場合,耐用上限量を超えちゃう可能性だってあるわけです。もちろん,習慣的にこれを3食で食べる人は少ないでしょうし,摂ったからといって健康障害が必ず起こるわけではありませんが,ここまで栄養素を添加する必要はなく,それによるデメリットのほうが大きいと考えます。通常はサプリメントのような食品でしか問題とならない栄養素の過剰が,この食品でも問題になっちゃうわけです。
以上2点が,私が「All-in NOODLES」の抱える栄養的な問題です。
では,そのような問題点を抱えつつ,「All-in NOODLES」 は「完全栄養食」と呼んでも良いのでしょうか。
「All-in NOODLES」は完全栄養食と呼べるのか?
「完全栄養食」の定義は人によって様々で,統一された見解はないかと思います。ただ,私なりの意見を言うならば,「日本人の食事摂取基準を満たすことができる食品」がそれに該当すると考えてます。もちろん,日本人の食事摂取基準は,対象の個人的特性によって基準値に差があり,よって1つの食品で多くの方の基準を満たすことが困難なこと,食事摂取基準自体も完全でなく,研究結果が蓄積されていない分野については,信頼性の高い基準値が策定されていない場合もあることなど,やや解釈が難しい部分もあります。が,そのような前提がありつつも,上記のような定義がもっともらしいと考えています。
そのような観点で見た場合,All-in NOODLESだとやや無理があるかと思います。特にカップタイプだと,脂質は多すぎます。加えて,その脂質の構成(飽和脂肪酸か不飽和脂肪酸かなど)も明らかでないので,余計に心配になります。もっというなら,塩分の量にももう少し気を配ってもらいたかったです。さらにさらに,栄養素を添加し過ぎで,食事摂取基準の範囲を逸脱する可能性だってあります。そのような食品を「完全栄養食」として呼ぶことに,私はかなりの抵抗を感じます。
付け加えるならば,日々忙しく健康的な食事が取れない人が,これらの食品に頼ることは悪いことではないかと思います。最高の選択肢ではないにしても,その時点で選択できる最善の選択かもしれません。味も,試食した感じでは「美味しさ」も感じられました。ですので,この商品のコンセプト自体を否定するつもりはありませんし,使い方によってはその個人の食生活を向上させるものかもしれません。
ただしそれだけに,やはり栄養素の偏り(特にカップタイプ)は残念です。せめて,カップタイプがもう少し脂質(飽和脂肪酸含む)控えめで,炭水化物が多めになると良かったのですが…。
とりあえず,以上が「All-in NOODLES」の栄養価についての私の雑感となります。参考になれば。