みなさん,こんにちは。
シンノユウキ(shinno1993)です。
突然ですがクイズです。
100gの「こめ(精白米)」を炊いて230gの「めし(精白米)」ができました。「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」を用いて栄養価計算を行う場合,下記3つでは,どの方法がもっとも適切な栄養計算方法(実際に摂取した成分量に近似)でしょうか?
- 01088「めし(精白米)」を210gで計算する
*100g × 210%(重量変化率) = 210gで計算 - 01088「めし(精白米)」を230gで計算する
- 01083「こめ(精白米)」を100gで計算する
このクイズに確信を持って答えられなかった方は,以下を読み進めてください。
というわけで今回は,食品標準成分表を用いた調理後食品の栄養価計算について,特に重量に焦点をあてて紹介します。
調理後食品の栄養価計算方法の基本
食品標準成分表には,調理後食品が多数掲載されています。食品は,調理によって成分を変化させますので,それを考慮するためには,調理後食品で栄養価計算を行う必要があります。
まず,調理後食品の栄養価計算方法をおさらいしておきましょう。食品標準成分表を用いて調理後食品の栄養価計算を行う場合,下記の計算式を使用します:
すなわち,料理後食品の成分値で,調理前食品の重量と重量変化率を使用して計算を行います。食品標準成分表を使用する場合は,上記の式を使用するのが適切です。
というわけで,上記クイズの正解は❶となります:
❸が適切でないのは理解できるかと思います。下記では,❷が(今回の場合は)適切でない理由について紹介していきます。
調理前重量と決められた重量変化率を使う
調理後食品の栄養価計算のポイントは,下記となります:
- 調理後食品の重量を直接使用しない
- 重量変化率も食品標準成分表で指定された値を使用する
調理後食品の成分値
調理後食品の重量を直接使用してしまうのは,(調理前食品の重量がわかる場合は)適切ではありません。食品標準成分表の調理後食品を使用する場合は,調理前食品の重量を,食品標準成分表で指定された重量変化率を使用して換算した重量を使用する必要があります。
というのも,食品標準成分表に収載されている調理後食品の成分値は,調理前食品の成分値との整合性を考慮し,原則として成分変化率を使用して算出されているからです:
成分変化率の算出には重量変化率が使用されています。重量変化率は,あらかじめ決められた加水量や調理方法(食品標準成分表に記載されています)などから算出されます。すなわち,食品標準成分表の調理後食品を使用して計算する場合は,食品標準成分表に記載されている重量変化率以外を使用することは適切ではありません。
*成分変化率ではなく,一部分析値を採用している場合もありますが,その場合でも「食品標準成分表に記載されている重量変化率以外を使用できない」ことは変わりません。
重量変化率が異なる場合
上記❷の場合も見てみましょう。もし❷が正しいとした場合,100gの「こめ」を多めの加水量で炊いて230gの「めし」ができた場合,230gで計算してしまうと,少なめの加水量で炊いた場合と比べて,エネルギー量やその他の栄養素量が多くなることになります。これは,明らかに間違っていると理解できると思います。
100gの「こめ」を炊いて230gの「めし」ができた場合,重量変化率は230%となります。決められた重量変化率である210%ですので,20gの差が生じることになります。この差の大部分は,加水量の違い,つまり「水分」の違いであると考えられます。すなわち,230gの内訳は,実質的には食品標準成分表の「めし」210g + 「水分」20gであると考えるのが妥当です。
というわけで,調理後食品の栄養価計算では,調理後重量をそのまま使用するのは適切ではないということになります。調理前重量から重量変化率を使用して計算するようにするのが適切です。
また上記を理解しておくと,揚げ物や炒め物などの栄養価計算を行う際にも理解しやすくなると思います(別の機会に紹介できればと思います)。
まとめ
今回は,調理後食品の栄養価計算方法について,特に使用する重量に焦点をあてて紹介しました。
重量変化率の扱いなど,認識が違ったいう方も多かったのではないでしょうか。
今回は使用する重量の違いについて紹介しましたが,一方で,実際の献立作成や食事調査では,上記以上に誤差の原因になる事項が存在しますので,それらに気を配ることも大切であることは認識しておきましょう。