みなさん,こんにちは。
シンノユウキ(shinno1993)です。
自分の好きな食べ物と,サプリメントを摂取するだけで健康に生きていけたらなぁと思うことがあります。
私が完全栄養食に惹かれるのも,それに近い理由があるかもしれません。
今回は栄養素を食品から摂取するかわりにサプリメントから摂取することについて紹介したいと思います。
栄養素で設定される食事の基準
一般に,食事のガイドラインは栄養素をベースにして作成されます。日本の食事ガイドラインである「日本人の食事摂取基準(2020年版)」でも,食品ではなく栄養素によって基準は設定されています。「1日に牛乳を200ml飲んで,ヨーグルトをカップに1つ食べて」ではなく,「カルシウムを800mg」と書かれているのです。
なぜ栄養素をベースに基準を決めるのでしょうか。逆説的に聞こえるかもしれませんが,身体が必要としているのは,食品ではなく栄養素だからだそうです。これについて,第一出版から刊行されている書籍版の日本人の食事摂取基準(2020年版)に掲載されている,佐々木先生執筆のオリジナル資料には下記のように書かれています:
人は食事を取り食品を摂取しています。しかし,人のからだが必要とするのは,食品ではなく,エネルギーと栄養素です。たとえば,マグネシウムの摂取すべき量が食事摂取基準で定められています。しかし,マグネシウムを野菜から取ろうとパンからとろうとからだは感知しません。それどころか,どちらから取ったかをからだは知らないのです。例えれば,食べ物は「栄養素を体の中に運ぶトラック」で荷台の荷物が栄養素です。
引用)伊藤 貞嘉, 佐々木 敏監修:日本人の食事摂取基準 2020年版, 第一出版 オリジナル資料p.10
どんな食品から摂取しても,含まれる栄養素に根本的な違いはない。この考え方が根底にあるため,食事ガイドラインは,食品や料理ではなく栄養素で基準を決める事となっています。食品は無数にあり,それに含まれる栄養素の組み合わせもかなりのパターンになります。食品で基準を決めようとすると,必要な栄養素量を満たすための組み合わせも無数に近い数になるため,食品や料理で基準を決めるのは現実的でありません。こういった考えから,日本人の食事摂取基準は栄養素によって基準が設定されているのです。
ハンバーガー + サプリメントで健康的な食事に?
さて,この考え方を適応すると,たとえばエネルギーや栄養素摂取量さえ満たすことができれば,一般的に不健康と考えられる食品を摂取する場合でも,それ以外の食品等で不足している栄養素等を補うことにより,健康的な食事を構築できるということになります。
不足している栄養素等を補うためには,いくつかの方法があります。野菜や果物などの健康的と考えられている食品で栄養素を補給する場合もあるでしょうし,ビタミンやミネラルの含まれた,いわゆるサプリメントで補う場合もあるでしょう。どの食品から摂取しても結局は同じ栄養素なのであれば,野菜から摂取してもサプリメントから摂取しても本質的に違いはないはずです(栄養素によっては,葉酸など食品中とサプリメント中とで構造が違う場合もあります)。
不健康な食事の例に出すのも忍びないですが,ハンバーガーで例えてみることとします。ジャンクフードと揶揄されることもあるハンバーガーですが,意外と?たんぱく質が多めでナトリウム(食塩相当量)も抑えられている傾向にあります。ですので,3食で必要なエネルギー量をハンバーガーで摂取し,不足しているビタミンやミネラル等をサプリメントで摂取できれば,栄養素上は帳尻をあわせることができます(飽和脂肪酸など摂りすぎに注意が必要な栄養素もありますが)。つまり,ハンバーガーとサプリメントでも,栄養素上は健康的な食事構築することができるということになります。
サプリメントの栄養素と食品の栄養素
ハンバーガーとサプリメントで健康的な食事を構築するためには,「食品中の栄養素とサプリメント中の栄養素とが本質的に同じ」という前提が必要となります。しかし,現段階ではこの前提を積極的に支持することは簡単ではありません。
たとえば,米国人を対象にタフツ大学の研究者らによって行われた研究では,適切な量の栄養素摂取による恩恵(全原因による死亡やCVDによる死亡の減少)は,食品からの摂取によってのみ認められ,サプリメントによる摂取では確認できなかったことを報告しています。
このことを,栄養疫学研究の限界と見ることもできなくはないでしょう。この研究では食事は24時間思い出し法によって調査され,サプリメントの使用は過去30日間に摂取したサプリメントの成分や頻度によって調査されました。サプリメントではだめで通常の食品ではOKだったという納得しづらい現象は,これらの調査の誤差によるものだとすることも不可能ではないかもしれません。また本研究ではサプリメント利用者と非利用者とでは教育歴や経済状態,現在の健康状態(病気)に違いがありました。これらの要因は調整されましたが,これら以外の測定できてない要因については調整できておらず,その部分での交絡が残っている可能性を捨て去ることができません。これを栄養疫学研究の限界とする見方もあるかもしれません。
しかしながら,少なくとも上記のような研究がある以上,「食品中の栄養素とサプリメント中の栄養素とが本質的に同じ」とするには,無理があるように思えます。
結論とまとめ
今回は不足している栄養素を食品でなくサプリメントから補ってもよいか?という点で紹介しました。
先に例に出したようなハンバーガー + サプリメントでOKか?となった場合に,それでOKとすることはできないでしょう。サプリメントには摂取が過剰になるというリスクもありますし,なによりサプリメント摂取にまだ知られていないリスクが潜んでいるかもしれません。またサプリメントだと,食品に含まれる他の栄養素との相互・相乗作用も得ることができません。
以上より,栄養素はサプリメントではなく,通常の食事で摂取することを目指すべきということになります。 特定の栄養ニーズ(低取得国の栄養失調の改善など)を満たす目的以外では,栄養素を食品ではなくサプリメントから摂取することを積極的に許容することは難しいと言えるでしょう。
まずは通常の食品からの栄養素摂取を目指すべきです。ただし,それによって栄養素摂取が改善しなかった場合にはサプリメントを使用しても良いと考えられます。栄養不足による弊害の方が勝ると考えられるからです。しかしその場合でも,「どの栄養素がどのくらい不足しているか」はしっかりと把握しなければなりません。意外と不足していないかもしれませんしね。